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ニュースと不動産

新聞記事から読み解く住宅被害判定 盛岡の不動産屋が教える、住まいと生活を守るための知識

2026年7月28日に発生した令和8年熊本地震から、2カ月が経ちました。この間、住宅の被害判定をめぐる新聞記事が目に留まりました。罹災証明書の判定に不服がある場合に申請できる「2次調査」を、被災者がためらっているという内容です。

盛岡で不動産実務や日々の住まいのご相談に向き合っている立場として、災害時の行政制度の限界と、平時からの備えの大切さを強く感じさせられる記事でした。いざという時に生活再建の足かせとならないよう、この記事から読み解くべき教訓と対策をまとめます。

罹災証明書における「調査の壁」と被災者のジレンマ

罹災証明書は、被災者生活再建支援金などの公的支援を受けるために必要な書類です。市町村が住宅の被害を調査し、その程度を判定して交付します。

判定は、住宅の損害割合によって6つの区分に分かれます。全壊(50%以上)、大規模半壊(40%以上50%未満)、中規模半壊(30%以上40%未満)、半壊(20%以上30%未満)、準半壊(10%以上20%未満)、準半壊に至らない(一部損壊、10%未満)です。数パーセントの差で区分が変わります。

最初に行われる1次調査は、主に建物の外観を目視で確認するものです。記事によれば、壁のひび割れや天井のゆがみといった表面的な被害から判定されるケースもあるといいます。

1次調査の結果に不服がある場合は、住宅の内部まで詳しく調べる2次調査を申請できます。ところが、2次調査では判定が1次より軽くなる場合もあります。熊本県宇城市は、2次調査を申請した市民に「2次調査の判定結果で確定します」と記した文書への同意署名を求めていました。支援金が減ることを恐れて申請をためらう声が上がり、市は9月17日に署名の取得をやめると発表しています。

不動産実務の視点から見た、判定のむずかしさ

日頃から法令の確認や物件の構造調査、賃貸管理の実務に携わっていると、建物の「外観」と「内部の構造的なダメージ」は必ずしも一致しないことを実感します。

1次調査は、膨大な数の被害を迅速に処理するため、外観の目視が優先される仕組みです。しかし、建物の傾きや基礎の深刻なダメージ、壁の内側の損傷は、中に入らなければ正確にはわかりません。

一方で、2次調査で判定が下がり得ることにも理由があります。内閣府は今年6月、基本的に2次調査の結果で判定するという運用指針を示しました。より詳しく調べた結果を採るという考え方です。ただし、実際の扱いは自治体によって異なり、熊本県内には、判定が軽くなった場合に2次調査の申請取り下げを認めたり、重いほうの結果を採用したりする自治体もあると報じられています。

被災者にとっては、被害の実態が同じでも、区分が一つ下がるだけで受けられる支援が大きく変わります。たとえば被災者生活再建支援金は、中規模半壊なら支給の対象になりますが、半壊では対象外です。制度の仕組みそのものが、再建を目指す人の心理的なブレーキになってしまうのが実情です。

盛岡の皆様へ 平時からできる「住まいを守る3つの備え」

万が一、盛岡で大きな災害が起きた際、行政の調査結果に対して正当な主張をするには、所有者自身が建物の状態を客観的に示せる準備をしておくことが欠かせません。

一つ目は、平時の住まいの記録を残すことです。建物の外観を東西南北の4面から撮るだけでなく、基礎、壁紙や天井などの内装、建具の立て付けまで、スマートフォンで定期的に撮影しておきましょう。撮影日時がわかる形で残すことが大切です。被災後の写真だけでなく、被災前は無傷だったことを示す写真が、調査員との認識のズレを埋める客観的な証拠になります。

二つ目は、重要書類の保管と電子化です。建築時の設計図面、確認済証、不動産売買契約書などは、持ち出しやすい場所に保管するか、PDF化してクラウドに控えを置いておくことをお勧めします。構造や使われている資材が図面で確認できれば、見えない部分の被害状況を専門家が推し量りやすくなります。

三つ目は、加入している保険の内容確認です。地震保険は、損害の程度を全損・大半損・小半損・一部損の4区分で認定し、区分ごとに保険金が支払われます(2017年1月以降に始まった契約の場合)。この認定基準は、罹災証明書の判定に使われる国の運用指針とは別のものです。同じ被害でも、公的支援と保険とで区分が一致するとは限りません。両方の仕組みを知っておくことが、生活再建の鍵になります。

あわせて覚えておきたいのは、2次調査を検討している間の支援の受け方です。宇城市の案内では、支援を受けた時点で判定結果が確定し、その後は2次調査を申請できないとされています。扱いは自治体ごとに異なるため、判定に納得がいかないときは、支援を受ける前に窓口で確認してください。

災害後の混乱の中では誰もが不安になり、行政の窓口でも説明不足や認識の食い違いが生じやすくなります。いざという時に、少しでも安心して適切な支援を受けられるよう、ご自宅の状態を把握し、記録に残す。今日からできるこの備えを、ぜひ実践してみてください。

本記事は、熊本日日新聞の報道(2026年9月17日)、宇城市の罹災証明に関する案内、内閣府・財務省の公表資料をもとにしています。

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