仮設住宅候補地の35%が浸水区域 「安心」ではなく「許容できるリスク」で住まいを選ぶ
2026年9月20日、災害時に建てる仮設住宅の候補地について、共同通信の調査結果が各紙で報じられました。全国の候補地2万2768カ所のうち、35%にあたる8054カ所が洪水浸水想定区域の中にあるという内容です。記事には、2024年9月の奥能登豪雨で冠水した石川県輪島市の仮設住宅の写真が添えられていました。
避難した先が、次の災害で浸かる。不動産に携わる者として、安全な土地を確保することの難しさを、あらためて突きつけられた思いがしました。
安全な用地は、もう十分には残っていない
調査は、47都道府県に対して2026年7月時点で把握している建設型仮設住宅の候補地を尋ねたもので、全都道府県から回答を得ています。洪水浸水想定区域内が8054カ所で35%、土砂災害警戒区域内が2135カ所で9%、その両方に含まれる場所も341カ所ありました。割合の高い県では、洪水浸水想定区域が福井県で67%、埼玉県で63%にのぼります。
これは自治体の怠慢というより、平らで広く、道路がつながっていて、上下水道が引ける土地が、そもそも川のそばや低い土地に集中しているという事情によるものです。被災者の生活再建を考えれば、元の住まいや学校、職場から遠く離れた山の上に建てるわけにもいきません。条件を満たす土地を探していくと、どうしても浸水の想定される場所が残る。用地不足は、選定の甘さではなく、国土の形そのものに由来しています。
備えを厚くするとは、平時の何かを削ることである
こうした報道に触れると、行政はもっと非常時の備えを厚くすべきだ、という声が上がります。もっともな指摘ではあります。ただ、非常時への備えを増やすということは、平時に使われている予算や人手を、その分だけ他から回してくるということでもあります。
財政に余裕があるとは言えない地方では、これはかなり厳しい選択です。使うかどうか分からない備えのために、目の前で足りていない何かを削る。その判断を、地域の責任者は限られた条件の中で下さなければなりません。行政の力だけですべてのリスクをゼロにすることは、構造として難しいのが実情です。
状況と目的があり、そこから方法が決まる
状況と目的があって、方法はそこから構成される。私が繰り返し立ち返る考え方です。気候の変わり方が読みにくくなり、去年の想定が今年そのまま使えるとは限らなくなった今、この方法を組み立てる作業そのものが難しくなっています。未知のリスクを織り込みながら決めなければならない一方で、土地の形も制度の枠組みも、すぐには動きません。
そうした時代に、漠然とした「安心」という感覚だけで住まいを判断することは、もうできなくなっていると考えています。
「安心かどうか」ではなく「どこまでなら許容できるか」
これからの住まい選びや不動産の運用で必要になるのは、客観的な材料を読んだうえで、自分はどこまでのリスクなら許容できるのかを把握して前に進む、という考え方だと思います。
ハザードマップで想定される浸水の深さを見る。都市計画や用途地域を確かめる。建物がいつの基準で建てられたかを確認する。そのうえで、この土地のこの条件なら受け入れられる、あるいはここは避けておく、と自分で線を引く。安全な場所を誰かが用意してくれるのを待つのではなく、リスクの中身を知ったうえで選ぶということです。
盛岡でも、川のそばの土地は珍しくありません。だからその土地が悪いということではなく、想定される水深がどれくらいで、避難の経路がどうなっていて、建物の一階をどう使うか。そこまで見て判断するかどうかで、同じ土地が違って見えてきます。
判断の材料を差し出すのが、私たちの仕事です
そうなると、不動産業者の役割はこれまで以上に重くなります。お客様がリスクを正しく評価し、納得して決められるだけの材料を、正確に差し出せるかどうか。調査して、確かめて、都合の悪いことも含めて伝える。そのための研鑽を、私たち自身がなお積んでいかなければならないと感じています。
盛岡で住まいと暮らしに関わる者として、これからも事実に基づいた情報をお届けしていきます。
仮設住宅の候補地に関する数値は、2026年9月20日に配信された共同通信の調査報道によります。同社が47都道府県を対象に、2026年7月時点で把握している建設型仮設住宅の候補地を尋ね、全都道府県から回答を得たものです。候補地は計2万2768カ所で、うち洪水浸水想定区域内が8054カ所(35%)、土砂災害警戒区域内が2135カ所(9%)、両区域に含まれるものが341カ所と報じられています。冠水した仮設住宅の写真は、2024年9月の奥能登豪雨における石川県輪島市のものです。用地不足の背景と住まい選びに関する見方は、筆者の見解です。