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ニュースと不動産

ハザードマップの「空白地帯」で起きる災害。不動産実務の最前線で感じる“想定外”への危惧

先日の台風25号による大雨で、千葉県や神奈川県では崖崩れや河川の氾濫が相次ぎ、甚大な被害が発生しました。被害に遭われた方々に心よりお見舞い申し上げます。

このニュースの中で、不動産の実務に携わる立場として非常に強い危惧を抱いた事実があります。それは、土砂災害で亡くなられた方のうち千葉県鴨川市の1名が、「土砂災害警戒区域の指定外」(ハザードマップで色がついていない場所)で災害に巻き込まれたということです。

報道によれば、現場は指定区域から約40メートル離れた場所で、斜面の傾斜が指定の要件である30度に満たなかった可能性があるとのことです。わずか40メートルの差で、地図の上では「色のない場所」になっていたわけです。

今回は、現場のリアルな視点から、少し踏み込んだお話をさせてください。

日本社会の弱点「想定外への脆さ」

私たち日本人は、決められたルールや「想定されている事態」に対する対応力は極めて高いと言われています。しかし一方で、「想定外のことが起きた場合に非常に弱い」という一面を過去から指摘され続けてきました。

現在、日本各地で起きている気象災害は、まさに「今までになかった状況」です。状況が劇的に変わっているにもかかわらず、私たちが身の安全を判断する「方法」が過去のままアップデートされていなければ、この弱みは最悪の形で露呈してしまいます。

「重要事項説明」のジレンマと限界

不動産の売買や賃貸を契約する際、宅地建物取引業法第35条に基づき「重要事項説明書」という書類を用いて、対象物件が土砂災害警戒区域等に入っているかどうかを必ず説明する義務があります。

しかし、この説明の絶対的な前提は「行政庁が公表している客観的な資料」です。

行政の資料に記載がない以上、当然ながら重要事項説明書に区域として載ることはありません。もし、目の前の土地の地形を見て個人的に不安を感じたとしても、不動産屋が個人の感覚で「ここは危険だ」「ここは安全だ」と断定することはできません。見て分かる崖や擁壁の状況を事実としてお伝えすることはあっても、安全か危険かの判定は私たちの役割を超えます。根拠のない判定を書き込めば、公的な基準に立つ書類としての機能そのものが揺らいでしまうからです。

ここに、日本の不動産取引における大きなジレンマがあります。

「行政のマップに色がついていない=100%安全」というわけでは決してないのに、公的な手続き上は行政の資料に準ずるしかないのです。

「安心構造」から「個人の判断」が問われる時代へ

日本は長らく、行政やシステムが整えてくれた「安心構造」によって構成され、守られてきた国です。ハザードマップを確認し、重要事項説明を受ければ、「これで安心だ」と思ってしまうのは当然のことかもしれません。

しかし、これだけ「想定外」の災害が続く現在、その安心構造だけに頼り切ることはリスクになりつつあります。今後重要になってくるのは、システムに依存しすぎない「個々人の自由意思による判断」です。行政のデータは過去のデータに基づいた一つの基準として捉え、自分自身の目で周辺の地形を見渡し、「本当にここは安全か」と自ら問いかける力が求められています。

中津川、北上川、雫石川が合流し、町の中央部を川が縫うように流れるここ盛岡は、美しい水辺の風景が日常に溶け込んだ街です。その一方で、大雨による増水や、それに伴う地盤の緩みとは常に隣り合わせの土地でもあります。今回の出来事は、決して他人事ではありません。

行政が用意した安心構造にただ身を委ねるのではなく、自分たちの暮らす街の地形と真摯に向き合い、いざという時の「今までになかった方法」を自ら構築していくこと。想定外を生き抜くための個人の判断力が、今まさに問われています。

台風25号による千葉県・神奈川県の被害状況、千葉県鴨川市の事例が土砂災害警戒区域の外であったこと、区域からの距離(約40メートル)と傾斜の見立ては、共同通信の2026年9月27日配信記事によります。土砂災害警戒区域の指定要件は土砂災害防止法に基づくものです。社会構造に関する見方は、筆者の見解です。

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