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電気室はなぜ地下や1階にあるのか 千葉のマンションで停電が続く理由

千葉市で、停電の続いているマンションがあります。

8月13日夜からの記録的な大雨で地下の電気設備が水没し、市内の12棟から13棟で停電や断水が続いています。22日の報道の時点でも復旧の見通しは立たず、市が対応のためのプロジェクトチームを立ち上げる、という段階です。豪雨から9日が過ぎていました。八月の千葉で、ランタンを灯して夜を過ごしている方がいます。

この豪雨については、ハザードマップの記事駐車場の記事で二度書きました。今日は建物の電気設備の話をします。当社も盛岡市内で建物の管理に携わっていますので、他人事ではありません。

「上の階に置けばいい」という声について

報道のあと、水の来る場所に置くのが設計上の誤りではないか、上の階に置けばよいのではないか、という声が出ています。もっともな疑問だと思います。ただ、現場にはそう簡単にいかない事情があります。

ここでいう電気設備は、正しくは受変電設備といいます。電力会社から高圧で受けた電気を、各住戸で使える電圧まで下げるための装置です。マンションでは、この設備の置かれた部屋そのものを電力会社に貸す借室電気室という形をとっていることも多く、その場合、部屋の位置は管理組合やオーナーの一存では動かせません。

重さと、搬入経路

受変電設備は、工場でつくられた大きな金属の箱です。これを上の階に載せるとなると、床の荷重だけでなく、地震のときの挙動まで設計から見直すことになります。国のガイドラインにも、上階に設置する場合は地震力により転倒するおそれがないか検討する必要がある、と書かれています。建物の重心が上がるとは、そういうことです。

搬入も簡単ではありません。分割して運べる機種もありますが、通路の幅、扉の大きさ、クレーンを据える場所を、設計の段階から織り込んでおく必要があります。しかも設備には寿命があり、いつか必ず入れ替えの日が来ます。そのときも同じ経路を通ることになります。

「3階を超える場所」という線

もう一つ、あまり知られていない事情があります。同じガイドラインには、受変電設備を建物の3階を超える場所に設置する場合、あるいは地中引込線の長さが50メートルを超える場合、一般送配電事業者との協議によって特別な工事費が発生する可能性がある、と書かれています。

設備をどこに置くかは、設計する側だけで決められる話ではありません。電気を送る側との協議事項でもあります。地下や1階という位置は、手を抜いた結果というより、いくつもの制約が重なった先に残った場所である場合が多いのです。

2020年に、国は考え方を示しています

とはいえ、上に置けないと決まっているわけではありません。

2019年の台風19号で、川崎市の47階建てのマンションの地下3階が浸水し、受変電設備が壊れて長時間の停電と断水が起きました。これを受けて、2020年6月に国土交通省と経済産業省が「建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン」をまとめています。

示された対策は四つです。電気設備を屋上など上階に設置すること。敷地のかさ上げや下水の逆流防止によって建物への浸水を防ぐこと。防水扉や設置場所の嵩上げによって設備室への浸水を防ぐこと。そして、排水と点検、復旧の手順をあらかじめ決めておくこと。

新築については、上階に置くという選択肢が正面から示されました。問題は既存の建物です。ガイドライン自身が、既存建築物では浸水リスクの低い場所への設置やマウンドアップを事後的に講じることは困難だと認めています。いま建っているマンションの大半は、2020年より前のものです。

既存の建物は、線で囲んで守る

そこで示されているのが、水防ラインという考え方です。エントランス、駐車場のスロープ、地下への階段、換気口。建物に水の入りうる経路をすべて洗い出し、一本の線で囲みます。そのうえで、線上の開口部を止水板や防水扉で塞げるようにしておく。線が一箇所でも切れていれば、水はそこから入ります。

止水板には、必要なときに取り付ける脱着式と、常に据えてある常設式があります。脱着式はいざというときに取り付けられるかどうかの訓練が要り、常設式は日頃の点検が要ります。置いてあるだけでは備えになりません。誰が、いつ、どの手順で動かすのか。そこまで決まって、はじめて機能します。

なお、既存のマンションでこうした工事を本格的に行うと、費用が億単位になる例も報じられています。管理組合で合意を得るという、もう一つの壁もあります。きれいごとで済む話ではありません。

高層階だから安心、とはなりません

今回の件があらためて示したのは、住戸が無事でも足元がやられれば暮らしは止まる、ということです。電気が来なければエレベーターは動かず、屋上の水槽へ水を送るポンプも止まります。階が上がるほど、影響は重くなります。

盛岡で、確かめておけること

盛岡で受変電設備が水に浸かったという話は、幸い当社では聞いていません。ただ、令和6年8月27日の夜には、中津川の山岸水位観測所が氾濫危険水位に達し、警戒レベル4相当の氾濫危険情報が発表されています。当社の店から歩いて行ける場所です。

建物を見るときに、あと数分だけ足元に使えることがあります。電気室や受水槽、ポンプ室が地下か1階のどこにあるか。駐車場や地下への入口に、止水板を差し込むための溝が付いているか。敷地が前面道路より低くなっていないか。浸水したときに誰が何をするのかが、管理会社や管理組合で決まっているか。

いずれも、尋ねれば分かることばかりです。ただ、尋ねられなければ誰からも出てこない項目でもあります。

当社は1984年から盛岡市山岸で、賃貸と管理の現場に立ってきました。物件の良い面だけでなく、こうした足元のこともあわせてお伝えしています。ご相談は完全予約制です。お電話(営業時間内は019-662-5353、時間外は自動応答の050-1720-0971)のほか、写真を添えていただける場合はLINE公式アカウントでも承っています。

本記事の被害状況は2026年8月22日までの報道に基づく整理です。復旧の状況は変わることがあります。設備の設置や改修の可否は建物ごとに異なりますので、個別の判断は建築士・電気工事業者等の専門家にご確認ください。

個別のご相談について

城下町のかたちが残る盛岡では、土地や建物にまつわる事情もさまざまです。 登記、境界、道路、相続。こうしたご相談を、人づてにいただくことがあります。 ご相談は完全予約制で承っています。

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