医療の重心が矢巾へ移った盛岡で、オンライン診療は土地選びをどう変えるか
老後の通院が不安なので、総合病院の近くに家を建てたい。土地をお探しの方から、こうしたご希望をうかがうことがあります。
考え方としては筋が通っています。ただ、盛岡で40年以上この仕事に関わってきた当社としては、現実はなかなか厳しいということを、先にお伝えすることが多いのが正直なところです。
盛岡の医療の重心は、矢巾へ移りました
まず、この数年で前提そのものが変わりました。
岩手医科大学附属病院は、2019年9月に盛岡市内丸から紫波郡矢巾町へ移転しました。さらに岩手医科大学は2025年2月、内丸に残っていた附属内丸メディカルセンターについても、医科診療機能の大半を2026年4月に矢巾へ移し、附属病院へ統合すると公表しています。
盛岡市の中心部にあった大学病院の機能が、年月をかけて南へまとまっていく。通院される方にとっては、移動にかかる時間がそのまま変わるということです。
土地がないのではなく、手の届く土地が少ない
設備の整った大きな病院というと、岩手県立中央病院(盛岡市上田)と、岩手医科大学附属病院(紫波郡矢巾町)が思い浮かびます。ただ、この二つは土地の事情がまったく違います。
上田のあたりは、すでに住宅が建ち並んだ既成市街地です。売地そのものが出てきません。まれに出れば、早い段階で買い手がつきます。
一方の矢巾は逆です。矢幅駅西地区の土地区画整理事業によって街並みが整えられたエリアですから、土地の供給は決して少なくありません。売地は普通に出ています。ただし、駅や病院に近く生活の便が良い区画となると、価格の水準はやはり高くなります。
つまり土地がないのではなく、条件の良いところは手が届きにくい、というのが正確なところです。ご予算とご希望のあいだで、いちばん悩ましい部分がここに集まります。
母を乗せて、月に2回、矢巾まで走っています
これは他人事ではありません。私も母を乗せて、月に2回、盛岡の自宅から矢巾の岩手医大まで車で通っています。片道30分ほどの道のりです。
今は私が運転できるので何とかなります。ただ、冬の凍った路面では、いつも以上に気を張ります。吹雪で視界がきかない日は、ハンドルを握る手に汗をかきます。距離の数字だけでは分からない部分が、雪国の通院にはあります。
免許を返したあとの足は、制度では埋めきれません
そこで考えてしまうのが、自分が年を重ねて運転免許を返したあとのことです。
盛岡市にも高齢者向けの制度はあります。ただ、敬老バス事業は老人クラブなどの活動でバスを利用するための仕組みで、通院に使えるものではありません。福祉タクシー及びガソリン等助成券は、障がいのある方が対象です(いずれも2026年8月時点)。毎月の通院の足を、そのまま肩代わりしてくれる制度は見当たりません。
公共交通が隅々まで行き渡っているわけではない岩手で、車を手放すというのは、生活の自由度をまとめて手放すことでもあります。かといって、病院や駅に歩いて行ける区画を無理に押さえられる方は限られます。
当社は長年、この医療と土地選びのジレンマに、きれいな答えを出せずにいました。良い土地はお探ししたい。ご予算には限りがある。将来の通院に苦労しそうな場所を、事情を承知のうえでおすすめするのも心苦しい。
オンライン診療が、行き詰まりに風穴を開ける
その行き詰まりに風穴を開けるかもしれないと考えているのが、オンライン診療の広がりです。
岩手県内でも、2023年度に県立宮古病院が県立病院として県内で初めてオンライン診療を導入したと報じられています。国としても、患者が自宅や近くの医療機関にいながら専門医の診察を受けられる形を、診療報酬の面から後押しする議論が続いています。
これが日常のものになれば、毎回吹雪のなかを矢巾や上田まで走らなくても、自宅から診察を受けられる場面が増えます。オンライン服薬指導や電子処方箋が広がれば、薬を近所の薬局で受け取ることもしやすくなります。
もちろん、すべてが画面越しで完結するわけではありません。検査や処置が必要であれば、これまでどおり通院することになります。対応できるかどうかは医療機関や薬局によって異なります。それでも、毎回必ず現地まで行かなければならないという前提が薄れる意味は小さくありません。
「良い土地」の条件が、変わろうとしています
病院までの物理的な距離という条件が、少しずつ緩む。そうなれば、病院に近い区画へ予算を目一杯つぎ込んで競り合う必要も薄れます。
同じ矢巾でも少し離れた区画、あるいは盛岡市内や滝沢市、紫波町。同じご予算であれば、土地の広さや日当たり、庭の取り方にまわすという選び方もできます。土地の良し悪しをはかる物差しが、いま静かに変わりつつあると感じています。
当社は1984年から、盛岡市・滝沢市・矢巾町・雫石町・紫波町で不動産の現場に立ってきました。ご家族の通院の事情も含めて、土地をどう選ぶか。判断の材料をお出しするところから、お手伝いできます。
ご相談は完全予約制で承っています。購入に関するお問い合わせ、またはお電話(営業時間内は019-662-5353、時間外は自動応答の050-1720-0971)で承っています。
本記事に記載した制度・施設に関する情報は2026年8月時点のものです。最新の内容は各医療機関および行政の窓口でご確認ください。