人気設備の一位が「高速ネット無料」へ 盛岡の賃貸で何が起きているか
賃貸住宅の設備について、十年続いた順位が入れ替わりました。全国賃貸住宅新聞が毎年発表している「この設備があれば周辺相場より家賃が高くても入居が決まる人気設備ランキング」で、10年連続で一位だった「インターネット無料」が2025年に首位を明け渡し、代わって「高速インターネット(1Gbps以上)無料」が一位となっています。
このランキングは「家賃が高くても決まるかどうか」を尋ねたものです。単に人気があるという話ではなく、賃料に反映しうる設備は何かという問いへの答えでもあります。設備そのものが変わったわけではありません。変わったのは、入居される方が「無料であること」ではなく「速いこと」を見るようになった、という点です。当社が盛岡で入居者様から伺うご相談の内容も、この変化と重なっています。
「ネット無料のはずなのに遅い」というご相談
ここ数年、入居者様から次のようなお話を伺う機会が増えました。夜になると動画が止まる。オンライン会議で音声が途切れる。休日の夕方だけ極端に遅くなる。いずれも「インターネット無料」をうたう物件でのお話です。
矛盾しているようですが、理由は建物内の配線方式にあります。集合住宅のインターネットには主に三つの方式があり、建物まで引き込んだ光ファイバーを各戸へどう分けるかが異なります。電話回線を使うVDSL方式は下り最大100Mbps、LANケーブルを使うLAN配線方式も同じく100Mbps程度が上限で、いずれも一本の回線を建物全体で分け合う構造です。そのため、住民が一斉に使う夜間や休日は速度が落ちます。一方、各戸まで光ファイバーを個別に届ける光配線方式は1Gbpsから10Gbpsの帯域を持ち、共有による混雑が起きにくくなります。
「ネット無料」という同じ表記の裏側に、十倍以上の差が隠れているというのが実情です。募集図面の設備欄を見ただけでは、この差は判別できません。
速さを求めるのはゲームだけではない
回線速度が話題になると在宅のゲームが引き合いに出されがちですが、現場で伺う内容はもっと幅があります。在宅勤務のオンライン会議、お子さんの学習動画、離れて暮らすご家族とのビデオ通話、クラウドへの写真の保存。どれも十年前の賃貸住宅では想定されていなかった使い方です。
そして通信の不満は、水漏れや設備故障と違って修理では解決しません。入居者様にとっては「この部屋では直らない不便」として蓄積し、更新のご判断に影響します。当社の実感としても、通信環境は退去理由として表面化しにくい一方、静かに効いてくる要素だと考えています。
盛岡の建物にかかる費用と、通信への投資
岩手県は全域が豪雪地帯対策特別措置法にもとづく豪雪地帯に指定されています。屋根や外壁、凍結対策など、建物本体の維持には相応の費用が継続して必要になります。空室対策としてまず思い浮かぶ水回りの改修や外装工事も、金額の面では小さくありません。
そのなかで通信環境の見直しは、建物の構造に手を入れずに検討できる数少ない選択肢です。金額は建物の規模、既存配管の有無、事業者との契約形態によって大きく変わるため、一律に「安い」とは申し上げられません。ただ、比較の土俵に載せる価値のある選択肢であることは確かです。
オーナー様に確認していただきたい三点
ご検討にあたって、まずご確認いただきたいのは次の三点です。
- 現在の配線方式 VDSL方式かLAN配線方式か光配線方式かで、打てる手が変わります。管理会社または導入事業者の書類で確認できます
- 募集時の表示内容 実際の速度が出ていない状態で「高速」と表示すると、不動産の表示に関する公正競争規約上の問題になりかねません。表示は実態に合わせる必要があります
- 既存入居者様の状況 改修の判断材料としてだけでなく、工事の際の在宅日程の調整にも関わります
お部屋をお探しの方へ
内見の際は、設備欄の「インターネット無料」という表記だけで判断せず、配線方式と実際の速度をお尋ねください。当社がお預かりしている物件については、把握している範囲でお答えいたします。分からない場合は分からないとお伝えし、確認のうえでご連絡します。
賃貸をご検討の方は賃貸物件お探しフォームから、所有物件の活用をお考えのオーナー様は不動産を貸したい方のご相談フォームから承っております。当社は1984年の創業以来、盛岡の旧市街地を中心に建物と入居者様の変化を見てまいりました。設備の流行を追うためではなく、長く住んでいただくための判断材料として、ご一緒に考えさせていただければと思います。