外壁塗装だけで満足?中古住宅リノベに「風情」を宿すグラスガーデンという選択肢
中古住宅のリノベーションといえば、水回りの一新と並んで「外壁塗装」が定番だ。
築年数が経ってくすんだ外壁も、足場を組んで職人が丁寧に塗り直せば、見違えるように綺麗になる。大抵のお客様はここで「まるで新築みたいになった」と満足される。
でも、現場で引き渡し前の真新しい外壁を見上げていると、時折ふっと違和感を覚えることがある。
「綺麗」にはなったけれど、どこか無機質で、建売住宅のような画一的な空気が漂ってしまうのだ。建物だけをピカピカにしても、その家が本来持っていた時間や空気感のようなものまで塗り潰してしまったような、そんなもどかしさだ。
「綺麗」なのに、どこか寒々しい
その原因は、実は「庭」にあることが多い。
盛岡の古い戸建てには、立派な庭石や、手入れの行き届かなくなった庭木が残されていることがよくある。夏の草むしりで滴り落ちる汗、冬の重い雪かき、そして冬囲いや雪吊り。庭が癒やしではなく、住む人の「重労働」になってしまっている。
だから、リノベのついでに「手入れが面倒だから、木は全部伐採してコンクリートで埋めましょう」というのが、私たちの業界ではお決まりの提案になっている。実際、私もそう提案してきた。
ただ、庭をコンクリートで塞ぎ、外壁を塗り直しただけの家は、ひどく寒々しく見える。そこで最近、別のやり方があるのではないかと考えるようになった。
外壁を「キャンバス」にする
それが、外壁塗装と「オーナメンタルグラス」を取り入れた庭づくりを組み合わせる手法だ。
夢枕獏の小説『陰陽師』に出てくる、安倍晴明の屋敷の庭をご存じだろうか。
手入れらしい手入れをせず、野の草が伸びるにまかせてある。季節の草が茂り、風に揺れ、やがて枯れていく。その移ろいを、そのまま楽しむ。あの世界観だ。
新しく塗り直された外壁を背景(キャンバス)にして、ススキやフウチソウ(風知草)といったオーナメンタルグラスを配置してみる。
するとどうだろう。無機質で直線的な新しい外壁の手前で、繊細なグラスの葉や穂が風でサワサワと揺れる。単に「綺麗になった家」が、途端にハッとするような「風情」をまとい始めるのだ。
古事記の国譲りの場面に、「ウシハク」と「シラス」という二つの言葉が出てくる。
人間が自然をコンクリートでねじ伏せ、我がものとして領する(ウシハク)のではなく、自然の理(ことわり)を知り、それに寄り添う(シラス)。そんなアプローチと言えるかもしれない。
手間がかからず、冬も絵になる
グラス類は非常に丈夫で、根付いてしまえば水やりも肥料もほとんどいらない。
盛岡の冬でも、初雪をうっすらかぶった枯れ穂は、それだけで立派な冬の景色(ウインターガーデン)になる。本格的に積もれば雪の下に伏せてしまうが、それもまた冬の庭の姿だ。
春先、新芽が動き出す前に根元近くからバッサリ刈り込めば、一年の手入れはおおむねそれで終わり。毎年の重労働からも解放される。
ただ、ススキは数年もすると大株になる。後から掘り上げるのは、それこそ重労働だ。植える場所だけは、最初によく考えておいたほうがいい。
肩の力を抜いた選択肢
建物を塗装して守り、庭は自然のサイクルに少しだけ身を委ねてみる。
中古住宅のリノベーションには、そんな肩の力を抜いた選択肢があってもいいと思う。
本記事で触れた小説は夢枕獏『陰陽師』(文藝春秋)、「うしはく」「しらす」の語は『古事記』の国譲りの段によります。植物の育ち方は一般的な園芸上の性質で、日当たりや積雪など植える場所の条件によって異なります。