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「二人で組まないと買えない」盛岡の現実――破綻を想定しない住宅ローンと、これからの将来設計

「ペアローン中離婚、訴訟も 共有財産分与の意見対立」。共同通信が2026年8月17日に配信し、岩手日報をはじめ各紙が掲載した記事です。夫婦がそれぞれ住宅ローンを組む「ペアローン」で購入した住まいが、関係の解消にあたって分けられず、訴訟にまで至る例があるという内容でした。

首都圏のタワーマンションの話として読まれがちな話題です。しかし当社は、この問題はむしろ盛岡のような地方都市でこそ重いと考えています。地方のほうが、収入を合算しなければ届かない度合いが高いためです。

「合算しなければ届かない」という地方の算数

住宅金融支援機構の「2025年度フラット35利用者調査」によると、利用者の平均世帯年収は716万円でした。この世帯年収は、本人と収入合算者を合計した額です。年収倍率は土地付注文住宅で7.8倍、建売住宅で6.9倍、中古戸建で5.3倍となっています。

一方、岩手労働局がまとめた令和6年賃金構造基本統計調査の県内集計では、一般労働者(企業規模10人以上)の所定内給与額は月291.6千円、年間賞与その他特別給与額は819.7千円でした。全国平均に対して、それぞれ80.3%と72.9%です。この二つを単純に足すと、岩手県の水準は年およそ432万円、全国はおよそ548万円となります。

ひとりの収入で、利用者平均の世帯年収に届く形にはなっていません。だから合算するのです。「地方は住宅価格が安いから負担も軽い」と言われることがありますが、価格と賃金の両方を並べなければ、負担の重さは測れません。

中古なら軽くなる、とも言い切れません

中古戸建の年収倍率は5.3倍で、土地付注文住宅の7.8倍より低い水準です。ただしこれは購入総額に対する倍率であって、毎月の返済額の話ではありません。中古住宅では建物の経過年数などから借入期間が短く設定されることがあり、期間が短ければ、総額が小さくても年間の返済額は下がりにくくなります。

当社が盛岡でご相談を受けて試算していても、中古だから単独名義で組める、という結論にはなかなかなりません。新築か中古かを問わず、合算を前提に検討がはじまるのが実情です。

「解消」を想定していない仕組み

厚生労働省の人口動態統計月報年計(概数)によると、2025年の離婚件数は179,068組でした。前年より6,836組減っていますが、同じ年の婚姻件数が489,119組であることを踏まえれば、まれな出来事ではありません。

それにもかかわらず、共同名義や収入合算という仕組みは、関係が解消されたあとの手順をほとんど用意していません。実務では、次の三つの出口が同時に塞がります。

  • 名義の一本化 片方の単独収入では、金融機関の審査が通らないことが多くあります
  • 売却 残債が売却価格を上回ると差額を用意できず、売り出すこと自体に双方の合意が要ります
  • 持分の買い取り 手元資金が足りず、金融機関も抵当権を外してくれません

出口がないまま時間が過ぎると、そこに感情の対立が重なります。冒頭の記事が伝えているのは、その先で起きていることです。

ノンリコース型という選択肢と、15年動いていない現実

返済が立ち行かなくなったときに担保となった住宅を引き渡せば、それ以上の返済義務を負わない。この「ノンリコース型」の住宅ローンは、以前から解決策の候補として挙げられてきました。国土交通省のサイトには、2011年3月付の「地域金融機関における家賃ノンリコース型住宅ローン プロトタイプ開発事業報告書」(ノンリコース型住宅ローン開発協議会)が掲載されています。

ただし、この報告書自身が普及の難しさを挙げています。中古住宅市場の流動性が低く担保として十分に評価されないこと。家を手放せば残債務を免れられるため、当初から無理な借入れを招きかねないこと。地価の低い地域では担保価値が限られること。そして金融機関がリスク負担に慎重であること。いずれも、地方において強く効く事情ばかりです。

報告書から15年が経ちましたが、一般の住宅購入で選べる商品にはなっていません。制度としての意義は大きいと考えていますが、制度が変わるのを待つ前提で、いま購入の判断をすることはできません。これは当社の見方です。

購入の前に確かめておきたい四点

制度の側が動くまでのあいだにできることは、「いくらまで借りられるか」から考えるのをやめることだと考えています。当社がお客様とご一緒に確かめているのは、次の四点です。

  • 片方だけになったときの返済額 合算前提の返済額と、単独で背負う場合の返済額を、はじめから両方お出しします
  • 売るとしたらいくらか 購入直後、5年後、10年後それぞれの残債と、想定できる売却価格の差を試算します
  • 名義と持分の決め方 出した資金の割合と持分の割合が合っているか。将来の財産分与や税の扱いに影響します
  • 団体信用生命保険が及ぶ範囲 ペアローンでは、それぞれが自分の債務に加入します。一方に万一のことがあっても、消えるのはその方の債務だけです

いずれも、購入の前にしか手を打てないことばかりです。契約を終えてからご相談をいただくと、選べる手は大きく減ります。

家が人生を縛るものにならないために

住まいは暮らしを支える器であって、将来の選択肢を奪う足かせであってはならないと考えています。私たちの仕事は、いくらまで借りられるかをお伝えすることではなく、万一のときに身動きが取れるかどうかを一緒に確かめることだと考えています。

当社は1984年の創業以来、盛岡の旧市街地を中心に、相続や関係の解消にともなう不動産の整理にも関わってきました。これから購入をお考えの方も、すでに共同名義の住まいをお持ちでこの先が気がかりな方も、まずは資金計画と出口の試算からご一緒させてください。

ご相談は完全予約制で承っています。購入については購入に関するお問い合わせから、売却の見通しを確かめておきたい場合は売却のご相談フォームから承ります。お電話は営業時間内(10:00〜17:00)が019-662-5353、時間外は自動応答の050-1720-0971でお受けしています。

個別のご相談について

城下町のかたちが残る盛岡では、土地や建物にまつわる事情もさまざまです。 登記、境界、道路、相続。こうしたご相談を、人づてにいただくことがあります。 ご相談は完全予約制で承っています。

note でも書いています

このブログは盛岡の街のことが中心です。 不動産の制度やしくみといった業界全体の話は、note に連載しています。

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