都心オフィス空室率1%台 出社回帰のニュースから考える、盛岡発のデジタル化
先日、新聞で興味深い記事を目にしました。東京都心5区(千代田・中央・港・新宿・渋谷)のオフィス空室率が、8月時点で1.87%まで下がったという内容です。
オフィス仲介の三鬼商事の調べによれば、この数字はコロナ禍前の2019年12月の1.55%に近づいています。在宅勤務が広がった2022年8月には6.49%まで上がっていましたから、この数年で空室は大きく埋まったことになります。
街に人が戻り、マスクを外す日常が戻って久しくなりました。それでも、企業がオフィスという物理的な拠点を再び強く求めているというテナント市場の動きを見て、社会が本当の意味で通常の姿に戻ったのだと実感させられました。
なぜ日本の企業は対面に戻るのか
報道では、企業が対面でのやりとりを改めて重視し、出社勤務に回帰する動きが広がっていると伝えられています。在宅勤務の仕組みは整ったはずなのに、なぜここまで出社へ戻るのでしょうか。
私はここに、論理よりも感覚的なものを重んじる、日本の仕事の文化が影響していると考えています。言葉にしたルールや理屈だけで仕事を進めるのではなく、場の空気、相手の表情、ふとした雑談といった言葉にならない情報を共有しなければ、物事が円滑に進まない。
これは日本のビジネス文化の良い面でもあり、同時に弱い面でもあると感じます。
地方都市にとっての重い現実
結局は対面でなければ仕事が回らない。この現実が地方に突きつけるものは小さくありません。
在宅勤務の文化が根付かなければ、仕事と人は今後も都市部へ集まり続けます。ビジネスの中心が物理的に東京に縛られ続ける限り、盛岡のような地方都市は、人口の減少と経済の縮小から逃れにくくなります。
日々、地域に根ざして不動産の実務に向き合っているからこそ、この流れには強い危機感を覚えます。
ほぼ全世代がデジタルに向き合った数年間
ただ、悲観するばかりではありません。コロナ禍という大きな危機の中で、日本の社会は一つの底力を見せました。ほぼすべての世代が、ある程度デジタルに向き合い、適応したという事実です。
現場の実感としても、この数年で高齢の方がスマートフォンで連絡を取り、写真を送ってくださることが当たり前になりました。オンラインでの申請や連絡に対する抵抗は、以前よりずっと小さくなっています。
地方発のデジタル化という道
だからこそ、これからのテーマは地方発のデジタル化だと考えています。対面での感覚的なやりとりという強みは大切にしながら、情報の伝達や事務の手続きはデジタルで徹底して効率化する。
当社でも、ご相談や各種の手続きを受け付けるウェブのフォームや、営業時間外の電話の自動応答を、自分たちの手で整えてきました。お会いして話すべきことに時間を使うために、それ以外の部分を軽くするという考え方です。
都会の真似ではなく、地方の実際の課題を解くためのデジタル化。それを自分たちの手で作り、発信していくところに、盛岡のような地方都市の活路があるのではないでしょうか。
都心のオフィスビルに明かりが戻るニュースを見ながら、地方からどのような働き方と暮らし方を形にしていけるのか。そんなことを考えた一日でした。
本記事の空室率は、三鬼商事の調査を伝えた報道(2026年9月24日)をもとにしています。