愛犬との暮らしは「自己実現」へ 歴史から読み解くペットと住まい、そして健康
人とペットの関わりは古く、私たちの歴史の中に深く織り込まれています。
縄文時代の貝塚からは、人と同じように丁寧に葬られた犬の骨が見つかっています。古代エジプトでは猫が神聖な動物として大切にされ、猫のミイラや猫をかたどった像が数多く残されています。
しかし現代の人とペットの関係には、かつてないほど大きな変化が起きています。
労働力から「自己実現」のパートナーへ
かつてペットは、主に実用的な役割を担っていました。ネズミを捕るための猫、外敵や泥棒を追い払う番犬というように、労働力としてその家にいたのです。いま、そうした実利を目的に犬や猫を飼う人はごく少数になりました。
政治学者イングルハートらの「世界価値観調査」は、社会が豊かになるにつれて、人々の価値観が生存や安全を優先するものから、自己表現や生活の質を重んじるものへ移っていくことを示してきました。
現代において犬を飼うという行為は、この変化の延長にある、自己実現の一つのかたちと言えるのではないでしょうか。
幸せなライフデザインと「犬のための家づくり」
不動産の現場でも、この価値観の変化ははっきり表れています。「犬を飼うために家が欲しい」「今の住まいでは飼えないから」というご要望は、住まい探しの大きな動機の一つです。
家を建て、家族が増え、子どもが「犬を飼いたい」と言い出し、庭付きの一戸建てを構える。ありふれた筋書きではありますが、この幸福なライフデザインの中心には、犬をはじめとするペットの存在が組み込まれています。
「孤独は人を傷つける」 家族としてのペットがもたらす癒やし
「孤独は人を傷つける」と言われます。年齢を重ねるにつれて社会とのつながりは減り、孤独を感じやすくなります。これは心身の健康にとって無視できないリスクです。
先日の新聞で、これに関わる研究が紹介されていました。国立環境研究所や東京都健康長寿医療センター、東京大学などの研究チームが、東京都内に住む高齢者約1万1千人を7年半にわたって追跡したものです。
その結果、現在犬を飼っている人は、飼ったことがない人に比べて、介護が必要な認知症を発症するリスクが48%低いことが示されました。成果は2026年7月、国際学術誌に掲載されています。
理由としては、毎日の散歩による運動習慣の維持や、散歩を通じた地域の人との交流が挙げられています。あわせて、犬による癒やしといった精神的な効果も考えられるとされています。
孤独を和らげ、外の世界とのつながりを生み出してくれる愛犬との暮らしは、健康に暮らせる時間を延ばすことにもつながっていくのかもしれません。
猫の殺処分ゼロが続く街、盛岡
ペットが身近になる一方で、飼い主を失う動物がいるという悲しい側面があることも事実です。
ここ盛岡市では、保健所に収容された猫の殺処分ゼロが続いていると伝えられています。その陰には、市との協働で保護猫の一時預かりや譲渡に取り組んできた認定NPO法人「もりねこ」の皆さん、そして多くのボランティアの方々の長年の尽力があります。
私自身、この活動には深い敬意を抱いています。こうした取り組みが実を結ぶ盛岡は、命に対する文化の水準が高い人々が暮らす街だと、誇りに思っています。
心を通わせるペットとともに健やかに暮らし、自分らしく生きられる住まい。山岸住宅産業は、盛岡でのそうした暮らしの舞台を見つけるお手伝いを、これからも続けてまいります。
本記事の研究内容は、新聞報道および研究機関の発表をもとに整理しています。研究は観察にもとづくもので、犬を飼うことが認知症を防ぐと断定するものではありません。